新規事業開発の実務

水疱瘡まじこわい

フリーランスは空気を読むな

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独立する前、しばしば上司と「サラリーマン力 (りょく) は大事だよね」という会話をした。優秀なベンチャー出身者や、フリーランスを社員として雇い入れた後、会社員独特のお作法がわからずパフォーマンスが発揮できないことがあったからだ。

ベンチャー出身者やフリーランスは、サラリーマン力の中でも特に「内部調整力」が弱い。少数精鋭で顧客やマーケットと全力で対峙する現場ではそんな力は必要とされていなかったのだから当然だし、別に悪いことではない。

逆に、大企業でサラリーマンを長くやった人間がピンとして独立すると今度は違う能力が必要になってくる。今まで培ってきた "調整力" をむしろ打破していく力。 "空気読まない力" 、もっと言えば "空気読みきった上で厚かましくスルーする力" とでも言うべきものだ。

調整力ってこんな感じ

大企業で、たくさんの部署・社員たちと、力を合わせて事をなすにはたくさんの内部調整が必要だ。いわゆるネゴシエーションである。
例えば、次の企画遂行のために社内の各事業部から協力を引き出す必要があるとする。

「○○事業部と、××事業部って、最近どっちが売上大きかったっけ?」
※ 有力な部署ほど力も強く、忙しく、社員の自負も高いので位置関係を把握

「××部長って△△本部長が前職の☆☆から引っ張ってきたんだよね?」
※ 学閥や前職つながり所以の派閥があれば、できるだけ上から話を通すのが基本

「○○さんってこないだ△△本部長から飲みに誘われてたよね?LINE知ってる?」
※ プライベートな関係は往々にしてビジネス上のつながりに勝ることがある

「△△さんにとって、これをやる意義ってなんだっけ」
※ メリットがないと人は動かない

人によっては「そんなことに時間とコストをかけるなんて、顧客軽視だ。そんな会社はけしからん」と思うかもしれない。しかしまあ、会社組織も人でできている。郷に入っては7割くらいは郷に従うべきというか、必要となれば最高効率で行うのが結果的にコスト削減、顧客還元になるだろう。

与えられた環境の中で、自分が発揮できる最大の成果を出すのがサラリーマンのプロ意識だと思う。

調整力を超えた「かきまわし力」

チームで大きな仕事をするために、調整力の研鑽は欠かせない。

ところが、独立してフリーランスになると、今度は違う能力が求められることに気がついた。組織としての健全な葛藤、軋轢を生み出す「かきまわし力」とでもいうべきものだ。

ここからの話は、以下記事にある「長期インセンティブが組織にもたらす作用」を前提に書いていく。

長期のインセンティブが "効いている" 組織では、メンバーの行動選択に "信用獲得" に向かう力がかかる。私たちはそれでなくても和を持って尊しとなす民族だし、空気読めない人を公然と叩く素養も持っている。

そんな組織に、「期間限定の人たち」が入ってくる。コンサルタントやフリーランス、顧問のような属性だ。この人種は組織の中で活動するが、長期インセンティブが効かない人たちである。彼らは、結果がでなければいつでも切られる。契約期間が切れるまでの短い期間に、高いギャランティに見合ったパフォーマンスを出すことを最優先に考える。

お尻が決まっている (契約期間終了が見えている) 人の方が、長期の雇用が確保された安定した立場の人より焦るのは当然だ。功を焦った「期間限定の人たち」は「調整」を軽んじてハレーションを起こしたり、時間やコミュニケーションが足りずに組織を動かせず、結果が出ないまま現場を去る。

要するに、難しいのだ。

お主がやらねば誰がやる

それでもフリーランスは、正規雇用の人たちができないことをやるために雇われている自覚を持ち、ハレーションや軋轢を恐れず結果にフォーカスして行動しつづけるべきである。

『内心、うまくいかないと思うけど、下手に発言して信用を失いたくないので他部署のことだし黙っていよう。』

『このビジネス、ここをこうすればいいのに。3年後に自分がリーダーになったらそうしよう。』

長期インセンティブが弊害を生んでいる組織では、正規雇用社員の心の中には、このような眼の前の問題を先送りにする動機づけがなされている。だれも納得していなくてもモノゴトは合意されるし、だれも納得していなくてもなんとなく予算がついて進んでいく。

フリーランスに3年後はない。他部署とか自部署とかいう組織上のクレジットの積み重ねもない。ただただ、いま請けている仕事の結果にフォーカスして行動するべきだ。

もちろん、強引な主張や調和を無視した行動で結果を毀損してはならない。 "空気読みきった上で厚かましくスルーする" のは、あくまでも「最高の結果を出すため」に、眼の前にある馴れ合いや先送りに対して問題提起や代案の提示を行うためである。

完璧な個は存在せず、仕事というのは様々な技術や知識や動機や想いをもったプロフェッショナルのコラボレーションだ。フリーランスであるからには、自分にしかできない価値を自覚し、提供できるように心がけたい。