新規事業開発の実務

どうせすぐ忘れるんでしょ\(^o^)/

1-1. 投資家の嗜好性把握 (前編)

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お世話になっております。
カーマンラインの直人です。

事業開発の実務 - フェーズ1. 参入領域の決定」というエントリで、参入領域の選定において社内起業家は、まずはじめに「投資家の嗜好性を把握」すべきだと説明しました。これは、多くのイノベーション理論やスタートアップの教科書に書いてあることとは真逆だと感じる方が少なくないのではないでしょうか。

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「今の時代、マーケットファーストであるべきだろう」

「事業開発はアイデアが全て。最初に投資家などということはありえない」

 

こういった意見も、それぞれもっともだと思います。本エントリではその理由も含め、社内起業家が行う事業開発において投資家の嗜好性を把握することの必要性を説明したいと思います。

 

スタートアップと事業開発の違い

なぜ事業開発では投資家が最優先なのでしょうか。 

端的にいうと、スタートアップの事業オーナーは創業者ですが、事業開発のオーナーは企業だからです。つまり株主、経営者、そしてその指示で動く役員や上司といった、会社のヒエラルキーがそのままオーナーシップのヒエラルキーになります。

この点を意識せず、サラリーマンがピュアにスタートアップ論を事業開発に応用しようとすると、やりたいこととできることがいつまでたっても噛み合わず、組織の狭間でいらぬジレンマに悩むことになるでしょう。

 

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社長であれ、上司であれ、最初からスポンサーがついているということはアイデアが決まる前の調査フェーズでも資金の枯渇を心配する必要がないし、戦い方を考える上でも豊富な資源を前提にできます。

これは非常に大きなアドバンテージです。

 一方、スポンサーが最初からいるがゆえに、「アイデア」の優先順位は出資者の意向に劣後します。スタートアップが「アイデア→出資者探し」という順番になるのに対して、事業開発は「出資者の意向→アイデア探し」という順番です。

 スタートアップは自分のアイデアを買ってくれる投資家を探し続ければよいのですが、社内起業家が上司以外に営業をかけるのは不可能とは言わないまでもハードルが高いです。やる場合は「アライアンスの提案」という形になりますが、投資家の意向を踏まえていない以上、活動できる時間はわずかだと思います。

  

出資者の嗜好性にはどんなものがあるか

経験からいくつか挙げてみます。

 

資産保有についての嗜好性

特にインターネット系の企業では、バランスシートが膨らむ事業を嫌う傾向にあります。逆に、物販や流通を扱っている企業は資産を投下する初期投資や回収について一定のロジックをもっていることが多く、その範囲内では寛容です。

 

事業領域についての嗜好性

ゲーム・エンタメといったボラティリティの大きい事業領域は保守的な事業を営む企業や縁遠い事業ドメインにいる企業からは敬遠される傾向にあります。逆に、それらを本業としている企業は一定のポートフォリオの中でリスクを分散しながら予算を割り当てていることが多いので好まれやすいと感じます。

投資家の過去の成功体験が色濃く反映される部分なので、企業や人の歴史を紐解くことでヒントが見つかるでしょう。

 

ビジネスモデルについての嗜好性

アービトラージモデル、ストック型ビジネス、広告収入モデル、売り切り型ビジネス、など、投資家のビジネスモデルに関する好き嫌いには明確な違いがあります。これも個人の過去の成功体験によるものが多いと考えられます。

アービトラージ、つまり裁定取引が好きな投資家は仕入れと小売の利ざやで稼ぐので広告投下に対する短期回収率を最重要視します。キャッシュの回転率がKPIとなる事業を好むでしょう。

ストック型ビジネスを好む投資家はTAM (Total Adressable Market) の大きさや営業効率、継続率に注目します。回収までに時間がかかるため、厳しいキャッシュフローに理解と耐性があることが多いでしょう。

tm2020.net

広告収入モデルはインターネットを使ったメディアビジネスで成功した人が好む傾向にあると感じます。「サービスが大きくなればいつでも回収できる。ビジネスモデルは後から考えればいい」というような人は広告型のビジネスモデルを暗黙的に想定しています。アイデアと初期のインパクトを重要視します。

 

まとめ

事業開発の現場では「投資家が最初から決まっており、後から変更できない」ため、参入領域の選定やアイデア探しの段階からそのすり合わせを行っておくことが重要です。 

ただし、投資家の意向を十分に踏まえて作られた事業計画であっても、エンドユーザーやマーケットが支持するものでなければ当然ながら成功はおぼつかないでしょう。

次回記事では、会社や上司の意向を尊重しながらもマーケットに対して正しくアプローチする方法について考察してみたいと思います。

 

※後編へ続く

 

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