新規事業開発の実務

どうせすぐ忘れるんでしょ\(^o^)/

1-4-1. 新規事業アイデア出しの方法 (基礎編)

はじめに

f:id:naoto111:20180903175318p:plainお世話になっております。
カーマンライン株式会社の直人です。

ここまで、新規事業開発における「参入領域選定」」という仕事の流れを説明してきました。続いて、参入領域をある程度定めた上での、企画と戦略立案のやり方について書いてみたいと思います。

今回はまず「新規事業のアイデア出し」の基礎にフォーカスします。

 

前置き 

このブログでは、ここまで企画については触れてきませんでした。そのため、読者の方の中には、「企画があってはじめて戦略や領域を検討するのではないか」と違和感を感じていた方もいらっしゃるのではないかと思います。

 

実際、そういうケースもたくさんあるでしょう。本ブログでも「フェーズ1. 参入領域の決定」にて、事業開発のきっかけは "ひらめき" だったり、会社組織として必要に迫られたりといった、様々なケースかあると書きました。

ただし、ここでは「社内起業家」や「事業開発部門」といった組織内での新規事業開発にフォーカスしているため、比較的説明がしやすく、再現可能なアプローチとして上記のフローを紹介しています。「説明しやすさ」にこだわるのは、次工程である「予算取り」を意識しているからです。

予算が取れないと仕事として意味ないよ、という点については「新規事業を立ち上げるために知っておきたい、たった1つのこと」という記事で触れました。よろしければご覧ください。

 

新規事業アイデアの作り方

新規事業の企画や、アイデアの作り方、というのは無数にあると思いますし、どんなケースでも誰にでも使える万能なものはありません。

ここでは、私が事業開発で使ってきた 新規事業アイデアの出し方 を紹介します。テクニックとしては例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 演繹的アプローチ
  • 帰納的アプローチ
  • ジレンマを探す
  • コピーキャット

詳しくはおいおい説明しますが、これらはあくまで手法論であり、テクニックにすぎません。基礎力・筋力にあたるのは「抽象化とリフレーミング」の質だと考えています。

 

抽象化とリフレーミング

大前提はこれ。このスキルです。

「ビジネス」を因数分解して (抽象化)、他の人が思いつかなかった 、もしくは実現できなかった切り口で再構築する (リフレーミング)、という能力の鍛錬です。

用語の説明からいきます。

抽象化

抽象化とは、「考え方のテクニック」で、対象から注目すべき要素を重点的に抜き出して細かい部分は気にしない、という方法です。例えば、ヒト→霊長類→哺乳類→動物→生物という風に、より上位の概念に包括していくことです。

1-4. 市場調査の実務」などで集めた事例や情報、データといった具体的なものから、背景や概念、ロジックといった一般的・普遍的を取り出して応用・転用するという作業の上流はまさに抽象化です。

 

リフレーミング

ちょっと薄い感じですが Wikipedia によると・・・・。

リフレーミング(reframing)とは、ある枠組み(フレーム)で捉えられている物事を枠組みをはずして、違う枠組みで見ることを指す。元々は家族療法の用語。

(中略)

同じ物事でも、人によって見方や感じ方が異なり、ある角度で見たら長所になり、また短所にもなる。 例えば、試験で残り時間が15分あった場合、悲観的に考えた場合は「もう15分しかない」と思うし、また楽観的に考えた場合は「まだ15分もある」と思うであろう。

 リフレーミング - Wikipedia

以下のブログ記事に例が載っていましたので、興味ある方はどうぞ。 

life-and-mind.com

 

現実から本質的課題や潜在的機会を取り出し、新しい切り口で再構築する。これが 「新規事業アイデア出し」 です。ひらめきも壁打ちも1000本ノックも、全てこういった作業の具象化だと言えます。

 

ケーススタディ

実際の事業を例にやってみましょう。

 

f:id:naoto111:20180904144936p:plain

 

ネットで見聞きしたこともあるのではないかと思われる、4つのビジネスを挙げました。

先ほど、抽象化とは「事例や情報、データといった具体的なものから、背景や概念、ロジックといった一般的・普遍的を取り出す」作業だと書きました。業界もジャンルも全く別々なこれらのサービスですが、共通する概念や注目すべき点を抜き出すことができるでしょうか。

 

例えば、私は以下のように抽象化しました。

f:id:naoto111:20180904150352p:plain

ラクスル は印刷会社の工場にある、稼働していない印刷機を活用して印刷を請け負う。

airbnb は個人の使っていない部屋や設備を貸し出す。

ごちクル は飲食店が昼間使っていない設備を活用して付加価値の高いお弁当を作る。

akippa は個人所有の駐車スペースをネットを通じて貸し出す。

これらのビジネスを知っている方は、このような「遊休資産活用」という共通点を見出すことができたのではないでしょうか。

※ お断り : ここで紹介しているビジネスが、創業から拡大までにおける全てのフェーズで上記に上げた点をKSFとしているわけではありません。例えば、ごちクルは工場での生産も行っていたそうですし、airbnb は専用物件も多いです。

 

また、これらのビジネス全てを「シェアリング」という概念で捉えるとしたら、更に別の切り方で細分化もできます。

f:id:naoto111:20180904151745p:plain

このように、個々のビジネスや事例から共通する上位概念を取り出すことが抽象化というプロセスです。

 

抽象化の意義

何のためにこのような抽象化を行うのでしょうか。

それは、抽象化によって仮説 (帰納的) や KSF (演繹的) を導き出すためです。例えば上記の抽象化プロセスからは、以下のような仮説を導き出すことができます。

 

ケーススタディからのラーニング

例) スマホの普及などで、だれもがインターネットサービスを気軽に使える時代になった。そのため、需要と供給のマッチングが非常にフレキシブルかつ低コストに実現できる。不動産や印刷設備、厨房といったコストが高く資産の回転率が重要な産業において、インターネットを活用したマッチングを行うことで遊休資産の活用ビジネスが次々と生まれている。

 

・・・こんな感じでしょうか。

ポイントは、「シェアリングが流行っている」というような表面的な事象を捉えた一歩先にある「背景」や「理由」を捉えることです。

 

仮説の応用

導いた「仮説らしきもの」を応用することで、新規事業のアイデア創出を試みることができます。

上記の例では「満たされない需要と供給を低コストで解決」と「資産のコストが高く回転率が重要な産業」の2点が満たされる領域なら使えそうです。例に出た以外の不動産や設備、自動車、家具、PC、コンピューティングリソースなど、当てはまる領域はいくつかあるのではないでしょうか。 このプロセスはリフレーミングに当たります。

これまでに出てきた言葉で言えば、「既存の産業を、他所から持ってきた新しい枠組み (仮説) で捉え直す」ということです。

 

リフレーミングは伝えやすい 

余談ですが、このような応用では、事業コンセプトを伝える際、既存ビジネスの言い換えができるため説明が楽です。

 

「僕たちのビジネスは、要するに自動車の airbnb です」

「僕たちのビジネスは、要するにメガネの ラクスル です」

 

・・・まあ、みんな考えてるんですけどね。

 

ちなみに、先程出てきた「低コストで解決」というアプローチはクリス・アンダーセンのFREE (フリーミアムモデルで有名) を読むとより本質的に理解できます。同書では「"ほぼ無料" なりソースを湯水のように使うことで、代替不可能な価値を生み出す」というような表現で説明されていました (たぶん)。Google の最大化戦略などもこの理屈で説明でき、インターネットビジネスの基本ではありますが、深く腹落ちしておく価値はあると思います。

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

 

新規事業アイデア出しの、帰納的アプローチ

冒頭で新規事業のアイデア出しにはいくつかのテクニックがあると書きました。

  • 演繹的アプローチ
  • 帰納的アプローチ
  • ジレンマを探す
  • コピーキャット

今回、ケーススタディで行った方法は上記のうち、「帰納的アプローチ」に当たります。

図 : 新規事業アイデア出しの帰納的アプローチ

新規事業アイデア出しの帰納的アプローチ

帰納法とは、さまざまな事実や事例から導き出される傾向から結論につなげる論理的推論方法のことです。事実や事例を元にすることから、納得感を与えやすく、取り出したアイデアを説明しやすいという特徴があります。

 

まとめ

本エントリでは、新規事業アイデア出しにおける重要なスキルとして「抽象化」と「リフレーミング」を紹介しました。

また、ケーススタディではラクスル・ごちクル・airbnb・akippaといった、異なるジャンルから共通する概念を抽出し、他の産業に当てはめてみました。併せて、その方法が帰納的アプローチであることに触れました。

 

最初にも書いた通り、新規事業のアイデア出しにはあらゆるケースに当てはまる万能な方法はありません。それでも、現実をつぶさに観察し、日々、抽象化する能力を身につけることで気づきや応用の幅はグッと広がるはずです。また、そういった地道なトレーニングこそが、新規事業開発という現場で戦っていくための基礎体力作りになります。

知識としておもしろかった、ためになった、というだけにとどまらず、ぜひ実践を通して皆様の事業に役立てていただければ幸いです。

 

個別のご相談・お仕事の依頼は inquiry@karmanline.co.jp まで。
それでは、よろしくお願いいたします。